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トレックより2022 TREK 新型Checkpoint(チェックポイント)が発表された。
この記事では、グラベルロードのヒストリーや状況を整理した上で旧型と新型の比較、3グレードのどれを買うべきか、旧Checkpointのユーザーなどをご紹介していく。
そもそもCheckpointとは?
トレックの初代Checkpointは、2018年にデビューを果たした。
当時はちらほらグラベルロードという言葉が飛び交い始めた時期だが、まだまだ市民権を得ているとは言えないレベル。
スポーツサイクリングのトレンドはアメリカが4-5年先行している印象がある。当時はアメリカでかなりグラベルがホットでヒップでクールなカルチャーとしてもてはやされ出した頃だ。
ノリとしては、ぴちぴちのサイクリングジャージを着てパワーメーターを付けて走っているライダーと、街中をピストバイクで疾走するライダーの中間ともいえるだろうか?
「自然を感じながら走りたいけど、ぴちぴちローディーと一緒にされたくない」
そんな価値観が伺いしれる。ぴちぴちローディーだった連中が、スリックタイヤのままでふらふらと砂利道を走り始めて「もうちょっとだけタイヤ太くしたい」と感じるシーンも想像に難くない。
2012年頃には、日本国内でラファ主催でGentleman’s Raceなるイベントが開催されているが、かなり荒れたダート(岩場?)を含むコース設定であった。2012年といえば、まだシクロクロスレースでもカンチブレーキが主流だった頃だ。参加者の多くはリムブレーキに23cのタイヤを履かせて、抜重しながら慎重に走ったことだろう。(それでもトラブルは多そうだが)
出典:www.cyclowired.jp
2018年に発表されたCheckpointはワイドなタイヤクリアランス、これでもかというほどに設けられたダボ穴、安定志向のジオメトリー、そしてDomane譲りのトレック独自技術ISO Speedの搭載により、グラベルライダーに広く受け入れられた。
しかし新型Checkpointを見ると、旧型は霞んで見える。それほどまでに新型は練りに練られている。
新形Checkpointと旧型との主な違い
新形Checkpointと旧型との主な違いは主にここに集約されるだろう。
- ハイエンドのSLRモデルの追加とProject One対応
- 新しいグラベル専用ジオメトリー
- SL/ALRモデルのドロッパーポスト対応
新型Checkpoint SLRの持つ意味とは?
今回、新しくハイエンドグラベルレーシングモデルとして、Checkpoint SLRが追加された。そしてトレックご自慢のカスタマイズプログラム、Project Oneにも対応したのだ。
今のところ、グラベルロードのカラーカスタムは存在しない。
唯一無二の存在といっていいだろう。
なぜトレックはこのタイミングでハイエンドモデルを追加してきたのだろうか?
新型Checkpoint SLRはピュアレーシングバイク
先ほど述べたGrinduroだけではなく、現在北米を中心に様々な場所でグラベルレースが開催されている。例えばガーミンアンバウンド(以前はダーティカンザという名称)は200マイル、約320kmを一度に走る非常にタフなレースとして知られている。320kmといえばロードレースでも聞かない距離だ。グラベルメインのコース設定であればなおさらタフなことは想像に難くない。メカトラブルも多いだろうが全て自己責任。
こういったタフなレースで勝敗を争うには、ロードレースにも近いような機材の性能が必要だ。つまりプロレーサーのハイトルクを受け止める高剛性なフレーム、直線区間で力をセーブするための空力性能、そして長い登りを少しでも有利にするには軽いに越したことはない。
そして新型Checkpointはこの条件を全て満たしている。
それを可能にしているのがOCLV 700カーボン素材だ。
OCLVカーボンとは?
OCLVはOptimum Compaction Low Voidの略。なんのこっちゃ。
これは2つのパートに分けると分かりやすい。まずはOptimum Compaction=超高密度圧縮から。
製造工程で金型にカーボン素材を配置した後、高い圧力をかけて成型していくのだが、この時の熱の掛け方と圧力の掛け方のは高い技術が必要となるのだ。
次にLow Void=隙間が少ない。
カーボン素材同士の間に不要な空気の隙間が存在すると、素材の強度が損なわれる。壊れやすくなるのだ。そうなると、カーボン素材を余計に使って強度を担保する必要がある。つまり重量アップに繋がる。トレックのOCLVカーボン技術は、ギリギリまで素材の使用を抑えることで軽量化しながら、ロードバイクに求められる強度を保つ技術であるといえる。
新型CheckpointはOCVL 700を採用
トレックにはOCLVの後に3桁の数字を入れてグレードを表している。大きい数字になるほど、強度、軽量性、剛性すべてが高まるそうだ。
現状、ロードのハイエンドであるÉmonda SLRとMadone SLRは最も高いグレードのOCLV 800を採用している。Checkpoint SLRは、Domane SLRと同じOCLV 700を採用している。つまりセカンドグレードだ。しかしOCLV 700は、一世代前のÉmonda SLRにも採用されており、実質ハイエンド素材の採用と言ってしまって差し支えないだろう。
新型Checkpoint SLRはProject One対応
どうせハイエンドバイクを買うなら、他人と被らないバイクが欲しいものだ。新型Checkpoint SLRはProject One対応となった。Project Oneというとカラーカスタムばかりが目につくが、メリットはそれだけに留まらない。ハイエンドライダーであれば、自身の最適なポジションは把握しているケースが多い。完成車パッケージを購入してしまうと、どうせハンドルバーやステム、クランク、ギア比などを自分仕様に交換する必要がある。Project Oneなら最初から完璧にフィットする形で最初から乗り始められる。
<Project Oneのカスタム画像入れる>
新形Checkpointの新しくなったジオメトリー
これまでハイエンドのSLRの話を中心にしてきたが、これからはシリーズ全体の話に移ろう。まずはジオメトリーだ。ここが今回の新型の肝ともいえる変更点だ。
前作のCheckpointはDomaneのエンデュランスジオメトリーを参考にしているように見える。
Domane | 旧Checkpoint | |
実効トップチューブ | 53 | 53.6 |
チェーンステー長 | 42 | 42.5 |
ホイールベース | 100.3 | 100.5 |
とどれも似通った数値となっている。
それぞれ52cmのフレームサイズで比較した場合
今回の新型Checkpointはこれとはまったく異なる新しいジオメトリを採用している
Domane | 旧Checkpoint | 新Checkpoint | |
実効トップチューブ | 53 | 53.6 | 55.5 |
チェーンステー長 | 42 | 42.5 | 43.5 |
ホイールベース | 100.3 | 100.5 | 103.3 |
どれも通常のロードバイクでは考えられないような数字だ。すべてが長くなっている。
これほどまでに安定志向のドロップハンドルのバイクがあるだろうか?ロードバイクの立ち上がりの俊敏性や加速感は捨てて、長距離ライドやトレイルに近い荒れたグラベルでの安定性に全振りした「ピュアグラベルバイク」と言っていいだろう。
前傾姿勢がキツ過ぎるのでは?という不安は不要だ。完成車では20mm短いステムがついてくる。Project Oneで買うなら普段より20mm短いステムを選べばいい。これはまさにモダンなマウンテンバイクの考え方そのもの。
現代のトレイルバイクは安定性を高めるために極端にフロントセンターを伸ばしている。
出典:Canyon.com
その分、ほぼフォークコラムとハンドルバーの間に隙間がほとんどない非常に短いステムを採用している。
つまり新型Checkpointはよりオフロードバイクに近づいたということだ。
リーチとホイールベースの大幅な変更。これこそが新型Checkpointの最大の特長と言っていいだろう。
新型Checkpoint SLRとSLの違いは?
同じカーボンモデルであるSLR(トップグレード)とSL(セカンドグレード)にはいくつかの違いが存在する
- Iso Speedの構造とドロッパーポスト互換性
- ダボ穴の数
- フレーム素材
トレック独自技術である快適性を高めるためのIso Speedテクノロジーがカーボンモデルには搭載されている。
SLRモデルはDomaneのような構造、トップチューブ~シートステーとは別の構造体を設け、上から専用のシートポストマストキャップを被せる形のようだ。
SLモデルはIso Speedでありながら一般的な27.2mmのシートポスト構造を採用している。これにより、ドロップハンドルでありながらドロッパーポストを装着することが可能になる。
個人的にはSLRモデルにもドロッパーポスト互換性が欲しいところだが、そこはレーシングバイクとしての軽量性を優先したのだろう。グラベルレースであれば腰を思い切り引かないと前転するようなドロップオフなどは登場しないのかもしれない。
一方でSLはSLRと比べて遊び・旅要素を多く取り入れている。グラベルバイクでシングルトラックを攻める猛者には、ドロッパーポストは必須だろう。
ダボ穴の数にも違いがある。グラベルレースで求められるのは水分の運搬能力だ。レース中の補給地点もあるだろうが、それまで水分が切れれば生命の危険もあるようなタフで自己責任のレースだ。Checkpointには最大4本のボトルを運ぶダボ穴があるが、これは全モデル共通だ。
しかしSLRモデルには、フロントフォークと、リアラックを付けるダボ穴が存在しない。ダボ穴を増やすということはカーボンの積層を工夫する必要があり、数十グラムの重量増に繋がる。10個のダボ穴を減らせば数百グラム。これは見逃せない。レースでキャンプ道具を運ぶライダーはいない。その意味でもSLRは純然たるレーシングバイクであると言える。
フレーム素材はSLはミドルグレードのOCLV 500シリーズを採用していることも価格に影響している。
なお、カーボンモデルの共通点としては、変速やブレーキホースは全てヘッドチューブからコラムを通ってフレームに内蔵されており、非常にクリーンな見た目だ。
ヘッドチューブの造形は最新のÉmondaなどと近く、クビレがあって美しい。
グラベルレースでも、アメリカや北海道のようなだだっ広いフラットダートであれば、DHバーを持ちながら走るケースもあるだろう。そのような際にワイヤー類が内蔵されていることは空力の観点から大きなメリットがある。
トップチューブに関してもちょうど真ん中あたりが細身になっている。サドルの上から見下ろしてもその美しさに惚れ惚れしそうだ。
またDomaneで採用されているダウンチューブの内蔵ストレージも見逃せない。
ファンライドにしても、レースにしてもパンク修理キットなどの運搬は欠かせない。頻繁に取り出す必要のない工具やチューブはここにしまうのがベストだ。
Domaneと比べて、開閉のハンドルの部分がやや改良されているように見える。操作性や密閉性に配慮しているのだろうか?
またウォーターボトルを取り付けるナットもゴールド?に塗装されているように見える。芸が細かい。
新型Checkpoint SLとALRの違いは?
Checkpoint ALRは最もお求めやすいアルミのグラベルバイクだ。カーボンモデルと共通のジオメトリーで完全な新型にアップデートされている。
ワイヤー類はカーボンモデルほどはクリーンに内蔵されておらず、またダウンチューブの内蔵ストレージも残念ながら存在しない。一方で、シートポスト型なのでドロッパーポストに対応しているのは嬉しい限りだ。
がしがしシングルトラックを攻めるのにカーボンモデルを使うのは気が引けるライダーはアルミのCheckpoint ALRを選ぶといい。
新形Checkpointに合わせて開発されたアクセサリー
トレックは社内にボントレガーというアクセサリーブランドを持ち、自社開発をしている。従来から前三角に入れるフレームバッグとトップチューブの上部に配置するフィーディングバッグはラインアップがあったが、今回下記の3アイテムが追加されている。
- 新型フレームバッグ
- 大型シートバッグ
- ハンドルバーバッグ
今回注目はなんといっても1の新型フレームバッグだ。
バッグの前後と上部には、バッグ内側からねじを通すための穴が設けられ、フレーム側にも同じ場所にダボ穴が存在する。これでバッグを直接フレームにマウントできるという。つまりバンド類が一切不要になりトップチューブに吊るすような形でバッグを保持できる。
見た目は非常にクリーンになり、他のバッグやアクセサリーとの干渉も起きない。またフレームにベルトを巻いて走ると、摩擦でフレームのコーティングがはがれることがあるが、その心配もない。なんとフレームサイズによってバッグのサイズもすべて違うというから驚きだ笑
恐らく、ある特定のバイクモデルとの相性を想定して開発されたフレームバッグは存在しないのではないだろうか?
シートバッグとハンドルバーバッグは一般的なものだ。トレックブランドで揃えたい!というライダーなら検討に値するだろう。
新型Checkpointのモデル別のおすすめライダーは?
新型Checkpoint SLRがおすすめの人(予算80万円~)
- グラベルレース出場を考えるレーサー
- Project Oneでカラーカスタムをしたい
- ハイエンドグラベルバイクが欲しい、でもそんなに攻めた走りはしない
新型Checkpoint SLがおすすめの人(予算30万円~)
- Iso Speedやカーボンフレームの恩恵は受けたいが、バイクパッキングやロングライドなどのファンライドがメイン
- オフロードのテクニックがあり、ドロッパーを付けてシングルトラックを攻めたい
新型Checkpoint ALRがおすすめの人(予算20万円~)
- 価格を抑えながらグラベルを始めてみたい
- カーボンフレームでオフロードを攻めるのに抵抗がある。
旧型Checkpointからの買い替えは必要?
まだ旧型が出て数年なので早急に買い替えるべきとは思いません。
買い替えを検討するべきユーザーは下記のケースでしょう。
- グラベルレースで良い成績を出したい
- ドロッパーポストを使ってもっと攻めたグラベルライドがしたい。
【まとめ】新型Checkpointは最も進化したグラベルロードだ
グラベルロードが注目を浴びるようになって早数年。このタイミングで全てを一新して登場した新型Checkpointはトレック肝入りの意欲作と言える。今年はどうやらÉmondaやMadone、Domaneといったオンロードバイクのフルモデルチェンジはなさそうで、トレックのロード開発チームは新型Checkpointに全力を投入してきたのだろう。
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