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トレックからシクロクロスバイクであるBoone(ブーン)の2022年モデルが発表され、フルモデルチェンジされることが分かった。ここでは旧モデルとの比較を通じて新型の特長を見て行きたいと思う。
新型Booneの変更点は大きく4つ
今回の新型Booneの変更点は大きく分けて下記の4点であると言えそうだ。
- フロントIso Speedの廃止
- ケーブルルーティングの変更
- フレーム形状の変更
- T47BBの採用
それでは一つずつ見てみよう
フロントIso Speedの廃止
Iso Speedとは、トレックが誇る振動吸収テクノロジーで、主にカーボンロードバイクに採用されている。下記の写真を見て頂きたい。
この写真のように、シートチューブとトップチューブの交点にベアリングが仕込まれており、前後に微妙にしなることで路面からの振動を吸収している。各モデルによって、しなり具合を調整する機構がついていたりなど微妙な違いはあるが基本的な設計思想は一緒である。
旧Booneはシート下のIso Speedだけでなく、ヘッドチューブ部分にも同じ構造を備えていた。これはフロントIsoSpeedと呼ばれ、旧Boone以外にはDomaneに採用されている。これにより、前輪からフォークを通じて腕に伝わる振動を吸収するのだそうだ。
前々作のBooneにはこれがついておらず、前作から新しく採用されたこのフロントIso Speedだが、今回撤廃の憂き目に遭った。これは正直、トレックの英断だと思う。
シクロクロスは競技の性質上、地面からの衝撃が大きい。また泥や砂の付着も多い競技だ。地面からの衝撃が頻繁に加われば、こういった可動部は知らず知らずのうちにガタが出るもの。細かい隙間から砂が可動部に入れば長い時間をかけて内側の構造を削り取る原因にもなるだろう。
特にシクロクロスは競技バイクであり、また短時間高強度であることから、それほど快適性が問われるものではない。余計なものはない方が良いのだ。
これにより約80gの軽量化を達成したそうだ。
ケーブルルーティングの変更
新型Booneは、ヘッドチューブ前側、ステムの下にケーブルを這わせている。

旧Booneは一般的なルーティングで、下記の写真のようにケーブルがかなり露出していた。
一番大きなメリットは、シクロクロス特有の「担ぎ」の際に現れる
腕をダウンチューブの下に入れて手前のハンドルバーを握るのだが、この際にケーブルが露出していると腕に絡まってしまうことがある。シクロクロスは短時間の競技なので、一瞬のトラブルが命取りになってしまう。
また、舗装路セクションがあるコースであれば、エアロ化によるパワー節約にも一役買うだろう。
それだけでない。ケーブルが内装されたバイクはとにかく美しい。
フレーム形状の変更
フレームの形状も全体的に角ばった形になり、エアロなKVF形状が随所に採用されている。
KVF形状とは、ティアドロップ(涙が落ちるような形状)の後方をスパッと切り落としたような形状を指す。
ティアドロップ形状は整流効果が高く非常にエアロ効果が高いのだが、どうしても断面が大きいため素材の使用が多くなり、重量増に繋がる。また乗り心地もハードだ。
後方を切り落とすことにより、一定の整流効果を保ちながら軽量化と乗り心地アップを達成するのがKVF形状。カムテールバーチャルフォイルの略称で、カムは開発者の名前で、テールは「尾っぽ」。バーチャルフォイルは「架空の翼」を意味する。
良く見ると、同じくKVF形状を採用しているÉmondaと良く似ている。ジオメトリーこそ違うが、ヘッドチューブやフォークからダウンチューブに繋がるあたりの処理は、まさしくÉmondaを踏襲したエアロオールラウンダー的なデザインと言えるだろう。
T47の採用
BBは従来のプレスフィットタイプからT47BBへの変更された。T47は2年ほど前からトレックが採用し始め、今やほとんどのトレックのカーボンロードに採用されている。プレスフィットタイプは軽量で高剛性である一方、個体差の問題でどうしても品質が安定しなかった。T47はクリスキングが開発したねじ切り型のBB規格で、アルミ製の薄いスリーブがフレーム装着され、そこにBBをねじ式で挿入していく。
トレックが採用するのはクリスキングの企画のままではなく、Praxisと提携して独自開発したT47。0.5mmほど厚みの違うパーツを採用することで、安定した品質を実現しているそうだ。

旧Booneと変わらなかったこと
まずジオメトリーは特に変更されていない。シクロクロスという競技自体のコースレイアウトに大きなトレンドの変化がない限りは、評価の高い現状のままで良いという判断だろう。
またリアのIso Speedに関してはそのまま維持されている。コンポーネントのチョイスなどにも大きな変更点は見受けられない。
新型Boone まとめ
新型Booneは、ジオメトリなどの本質的な部分は従来モデルを維持しつつ、Iso Speedの撤廃、ケーブルルーティング、フレーム形状、そしてT47BBへの変更など、堅実なモデルチェンジを果たしたと言えるのではないだろうか。
Boone 6
税込み価格:475,200円
カラー/Carbon Smoke/Lithium Grey/Trek Black
フレーム 600 Series OCLV Carbon,T47 BB, flat mount disc, 142x12mm thru axle
フォーク Trek Cross, full carbon, 12x100mm thru axle
フロントホイール Bontrager Paradigm Comp 25, Tubeless Ready, 25mm rim width, 100x12mm thru axle
リアホイール Bontrager Paradigm Comp 25, Tubeless Ready, 25mm rim width, Shimano 11-speed freehub, 142×12 thru axle
タイヤ Bontrager CX3 Team Issue, aramid bead, 120 tpi, 700x32c
シフター Shimano GRX RX810, 11 speed
リアディレイラー Shimano GRX RX810, long cage, 34T max cog
ボトムブラケット Praxis, T47 threaded, internal bearing
カセット(スプロケット) Shimano Ultegra HG800-11, 11-34, 11 speed
チェーン Shimano Ultegra HG701, 11-speed
シートポスト Bontrager carbon seatmast cap, 5mm offset, short length
ハンドルバーBontrager Elite IsoZone VR-CF,
ステム Bontrager Pro
ブレーキローター Shimano MT800, centerlock, 160mm
重量 8.3 kg(56cmサイズ)
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